生活習慣病
生活習慣病とは
生活習慣が関与し、発症の原因となり高血圧や糖尿病、脂質異常症(高脂血症)などの病気が発症するのを生活習慣病と言います。ここ数年は、新型コロナウイルスの影響で外出自粛などを強いられ、幅広い年代で生活習慣の乱れが目立っています。生活習慣病を未然に解消するためには、これまでの生活習慣を改善する必要があります。当院では、以下の内容で患者様のこれまでの生活習慣を見直し、健康維持をサポートしております。
【日常生活のご確認事項】
1日における食事内容と回数
・喫煙や飲酒の量
・1日における睡眠時間と就寝時間
・1日における運動時間や種類
・ストレスの程度とそのコントロール
日常の生活・食事・運動などの習慣から見直しましょう
日常生活における食事や運動など、生活習慣が健康に大きな影響をおよぼします。暴飲暴食や運動不足による肥満、過度の喫煙や飲酒、ストレスなど不摂生な生活を長く続けることで、生活習慣病が発症するリスクが高まります。日常の食事、運動、睡眠、ストレスなどを一度見直して、改善することが非常に重要です。
高血圧症
血圧値が正常よりも高い状態が長く続くと高血圧症とされます。測定値では、診察室血圧で最高血圧が140mmHg以上または、最低血圧が90mmHg以上ある場合に高血圧症と診断されます。また、家庭血圧では診察室血圧よりも-5mmHgで高血圧症となります。高血圧自体は目立った症状はありませんが、長く放置してしまうと、動脈硬化が進んで脳卒中や狭心症、心筋梗塞などを引き起こすリスクが高まります。
【原因】
主な原因は、肥満、塩分の過剰摂取、運動不足、ストレス、過度の喫煙や飲酒など、生活習慣が影響して引き起こします。
【治療】
基本的に食事習慣や運動習慣の改善を行います。特に、食生活をしっかりと見直す必要があります。塩分摂取の目安としては、6g/日未満に抑えます。高たんぱく、高脂質の食事を控え、体重を適正体重に維持することで血圧をコントロールしていきます。
薬物療法
- カルシウム拮抗薬
- アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)
- アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬
- 利尿薬
- β遮断薬
-
アルドステロン拮抗薬 など
食事習慣や生活習慣を改善しても血圧が下がらない場合は、降圧薬を服用していきます。
脂質異常症(高脂血症)
血液中の脂質が多すぎる、または少なすぎる状態を脂質異常症と言います。LDL(悪玉コレステロール)、中性脂肪(トリグリセリド)が正常値よりも高い、またはHDL(善玉コレステロール)が正常値よりも低い場合を指します。高カロリー、高脂肪の食事や運動不足などが原因であるほか、遺伝的要因も大きいとされています。脂質異常症は、特別な自覚症状がありませんが、そのまま放っておくことで動脈硬化が進んで心筋梗塞や脳梗塞など重篤な疾患を起こす恐れがあります。
【脂質異常の基準値】
高LDLコレステロール血症:140mg/dl(120~139mg/dlは境界域)以上
低HDLコレステロール血症:40mg/dl未満
高トリグリセリド血症:150mg/dl以上
【治療】
食事療法と運動療法を行います。これまでの生活習慣を見直しても改善がなかなかみられない場合は、薬物療法を行い、正常値にコントロールしていきます。脂質異常症のタイプによって、治療方法が異なります。
食事療法
高LDLコレステロール血症が高い場合
1日に摂取するカロリーを適正値にして、コレステロール値をコントロールしていきます。脂質の高い肉食やバターやラードなどの油脂を控えて、野菜や果物を積極的に摂ります。また、青魚やきのこ類、豆類などを摂り、栄養バランスの取れた食事を心がけます。
高トリグリセリド血症
トリグリセリドは中性脂肪と呼ばれ、要因としてはカロリーの取り過ぎ、とくに甘い物・油物、炭水化物、お酒の取り過ぎが原因となります。食事・運動習慣の見直しも行います。1週間に3日程度、できることから始めてみましょう。また食べ過ぎに注意して、腹8分で抑えることも大切です。
低HDLコレステロール血症
高トリグリセリド血症と関連することが多く、同様に脂質が高い食事を控え、運動や喫煙などの生活習慣の変更を行います。
高尿酸血症(痛風)
血液中の尿酸値が高い状態が長期的に続いて炎症を起こした状態を、高尿酸血症と言います。血中濃度7.0mg/dl以上の状態が継続すると、痛風発作や尿路尿管結石、腎結石、腎機能障害など重篤な症状を引き起こしてしまいます。自覚症状はないことも多いですが、足の親指や肘関節、耳介などに結節として現れることもあります。
痛風発作とは
痛風発作の主な症状として、足の親指付け根で激痛が生じ、赤く腫れ上がり、耐え難い激痛が起こります。その他の部位では、足の甲や足首、膝、手首などに発作が生じます。
【治療】
通風発作時には、痛みと腫れを解消するために消炎鎮痛薬を服用します。
症状が改善したら、発作が再発するのを防ぐために尿酸値を降下させる薬(尿酸排泄抑制薬や尿酸産生抑制薬)を用いて治療します。また、脱水状態になると発作が起こりやすいため、夏季など暑さで脱水症状を起こしやすい時期は注意が必要です。症状・痛風発作がなく8.0mg/dl以下の場合では薬は使用せず、その他合併症の有無などを含めて治療方法を検討します。
生活習慣
食事習慣を改善します。尿酸はプリン体から作られるため、プリン体摂取量に注意していきます。特に、ビールやレバー、干し椎茸、エビ、イワシ、白子、干物(魚)などに多く含まれます。また、飲酒習慣がある方は痛風発作もなりやすいとされているため、過度の飲酒は控えてください。肥満の方は痛風を発症するリスクが高いため、食事療法や運動療法で適正体重を保つようにしますが、過度な運動も尿酸上昇を来すので注意が必要です。
薬物療法
尿酸を下げる薬は尿酸の排泄を促す薬(尿酸排泄薬)と尿酸の生成を抑える薬(尿酸生成抑制薬)に大きく2つ分けられます。それぞれのタイプにあった薬を使用しますが、尿酸結晶が溶けるまでには長く時間がかかるため、治療を根気良く継続することが重要です。痛風発作時には痛み止めや炎症を抑える薬を使用します。
メタボリックシンドローム
内臓脂肪が蓄積した肥満状態に、代謝機能不全が重なって高血圧や高血糖、脂質異常のうち2つ以上を有している状態を「メタボリックシンドローム」と言います。メタボリックは「代謝」、シンドロームは「症候群」という意味です。
メタボリックシンドロームをそのまま放置すると、高血圧や糖尿病、腎臓病、脂質異常症(高尿酸血症)などを合併するリスクが高くなるため注意が必要です。進行すると、脳梗塞や急性心筋梗塞など重篤な疾患を発症する恐れがありますので、早い段階から食事習慣や運動習慣の改善で体重や血圧値、血糖値のコントロールすることが重要です。
メタボ(メタボリックシンドローム)の診断基準
※立った姿勢で軽い呼気時にウエスト周囲の長さを測って内臓脂肪型肥満の有無を判断します
- 男性の場合:85cm以上
- 女性の場合:90cm以上
※血圧値、血糖値、血中脂質値が以下の2項目以上に当てはまっているかを判断します
- 収縮期血圧:130mmHg以上
- 拡張期血圧:85mmHg以上
- 高トリグリセライド血症:150mg/dl以上
- 低HDLコレステロール血症:40mg/dl未満
- 空腹時高血糖:110mg/dl以上・HbA1c5.5%以上
【治療】
内臓脂肪の蓄積が原因のため、食事と運動などの生活習慣を見直していきます。基本的に、食べ過ぎと運動不足を解消し、メタボリックシンドロームを改善していきます。また、動脈硬化が進むのを防ぐために喫煙習慣を見直し、禁煙を目指します。重篤な合併症を避けるためにも、いずれも早い段階から治療を開始することが重要です。
糖尿病内科
糖尿病とは
血液中のブドウ糖が正常値よりも増えてしまい、高血糖状態が長く続く病気を糖尿病と言います。インスリンの不足や機能低下が主な原因です。
高血糖状態が長く続くと、動脈硬化が進行してしまい、脳梗塞や心筋梗塞など重篤な疾患を発症するリスクが高まります。また、網膜症や腎症、神経障害など、糖尿病合併症を起こす恐れがあるため、早めに治療を行う必要があります。
それぞれの目標値にあった血糖コントロールをすることで、合併症の進行のない、糖尿病のない人と変わらない生活を目標とします。
糖尿病の原因
インスリンの分泌不足、またはインスリン機能の低下が原因です。糖尿病は、4つのタイプに分類され原因もそれぞれ異なります。
主に、2型糖尿病・1型糖尿病があります。
2型糖尿病
インスリン産生不足や機能低下によるもので、遺伝因子と生活環境などが組み合わさって発症すると考えられています。
1型糖尿病
インスリン分泌する膵臓のβ細胞が損傷し、産生不足になることが原因です。原因ははっきりとしていませんが、遺伝因子、ウィルス感染などをきっかけに自己免疫が関与していると考えられています。
このような方は糖尿病になりやすいかも!?
以下に当てはまる方は糖尿病になりやすいとされるため、注意が必要です。
- 親族など血縁者に糖尿病罹患者がいる
- 親族など血縁者に肥満や心臓病、脳卒中などの罹患者がいる
- 運動不足である
- 外食する機会が多い
- 甘いものや脂っこい食事が好き
- 太っている・肥満が気になる
- お酒が好き
- 過度にストレスがかかっている など
糖尿病の治療
それでも、症状や数値が改善しない場合は、薬物療法を実施します。適切な治療と生活習慣の改善で、病気の進行を抑えることが可能です。
食事療法
医師や栄養士の指導のもと、1日に摂取するカロリーを制限しながらコントロールしていきます。高血圧がある場合は、塩分摂取にも注意が必要となります。
運動療法
適切な運動を行って、筋肉量を増やすことで糖吸収を促します。それと同時に、脂肪が減るためインスリン機能が高まります。患者様の年齢や身体の状態に応じて、適度な運動メニューを提示させていただきます。
薬物療法
食事療法と運動療法を行っても改善が乏しい場合は、薬物療法を検討します。血糖値を降下させる内服薬、GLP-1受容体作動薬、インスリン注射などをを実施します。
【内服薬(経口血糖降下薬)】
糖尿病の内服治療として、下記のような薬を使用します。
特徴 | 種類 | 作用 |
---|---|---|
インスリン分泌を促進する | スルホニル尿素薬 | インスリン分泌促進 |
速攻型インスリン分泌促進薬 | 速やかなインスリン分泌促進 | |
DPP-4阻害薬 | インスリン分泌促進とグルカゴン分泌抑制 | |
GLP1受容体作動薬 | インスリン分泌促進とグルカゴン分泌抑制 | |
インスリンの作用を高める | ビグアナイド薬 | 肝臓の糖産生を抑える |
チアゾリジン薬 | 肝臓のインスリン感受性及び骨格筋向上 | |
インスリンの分泌・作用を高める | イメグリミン | インスリン分泌促進と糖産生抑制 |
糖の吸収・排泄をコントロールする | α-グルコシダーゼ阻害薬 | 炭水化物吸収を遅くして食後の高血糖を抑制する |
SGLT2阻害薬 | 腎臓の糖再吸収を阻害してブドウ糖排出を促す |
【GLP-1受容体作動薬(内服・注射)】
GLP-1は、インスリン分泌を促し、血糖値を降下させる役割があります。
体内にあるホルモンの1つで、血糖が上がったときにインスリン分泌を促します。このGLP-1を内服または注射で補います。注射には毎日・週1回など様々な種類があります。
【インスリン(注射)】
膵臓のインスリン分泌が不足している場合は、注射でインスリンを投与していきます。インスリンは、血中からの糖取り込みを促して血糖値を降下させる働きがあります。
糖尿病のよくあるご質問
【2型糖尿病について】
2型糖尿病は遺伝しますか?
遺伝的要因に生活習慣の乱れなどの環境要因が重なることで、糖尿病を発症しやすくなります。
2型糖尿病になりやすい人はどんな人ですか?
暴飲暴食、不規則な食事、栄養バランスが良くない、間食が多く甘いものが好き、運動不足、高血圧、喫煙習慣などがある方は、2型糖尿病になりやすいと言えます。また、親族など血縁者に糖尿病罹患者がいる場合は、遺伝的要因から発症するリスクが高いとされています。
2型糖尿病を悪化させる食べ物はなんですか?
特に、白米やうどん、食パンは糖吸収が良いため、高血糖になりやすい食品とされます。食事療法を行っても食べられなくなるものはありませんが、食べ過ぎには注意が必要です。外食する機会を減らしたり、味の濃い食事を控えたりすることが大切です。
【血糖値】
血糖値コントロールがうまくいきません。どうすれば良いでしょうか?
血糖値コントロールは非常に難しいです。食事療法と運動療法、薬物療法を適切に行うことが必要です。あまり血糖値にとらわれないことも大切です。気にし過ぎることがストレスになると、さらに血糖値が上がってしまいます。血糖値コントロールが上手くいかない時も、軽く前向きな気持ちで取り組むようにしましょう。
運動をすれば血糖値は下がりますか?
運動療法を行うと、細胞内への糖の取り込みが促され、また継続すると脂肪が落ち筋肉量が増えて血糖値が下がりやすくなります。
【糖尿病検査について】
血液検査は空腹で採血した方が良いですか?
血液検査は必ずしも空腹で行う必要はありませんが、食後には血糖値が上昇しますので、最終の食事時間はお伝えください。
HbA1cとは何のことですか?
赤血球中のヘモグロビンが、ブドウ糖と結合したものをHbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)と言います。血液検査を行うことで、ヘモグロビンの中にHbA1cがどれぐらい含まれているかがわかります。過去1~2ヶ月以内の血糖値が推測できます。
空腹時血糖値が180mg/dlだった場合、ブドウ糖負荷試験を受けた方が良いですか?
空腹時血糖値が180mg/dlの場合、すでに糖尿病を発症しているかもしれません。空腹時血糖値126mg/dl以上だと、糖尿病の可能性があると判断基準があります。そのため、まずはHbA1cを測定し、HbA1cが6.5%以上の場合は糖尿病と診断されます。この場合、ブドウ糖負荷試験を受ける必要はありません。
【インスリンについて】
インスリン注射をしていますが、止められるようになりますか?
自身のインスリン分泌が保たれている場合は、やめられる場合もあります。患者様のご要望をうかがいながら、糖尿病治療を進めていきますので、不明な点がありましたらお気軽にご相談ください。
インスリン注射をする際の自己血糖測定はした方が良いですか?
インスリン注射を行う際は、自己血糖測定を行います。自己血糖測定を行うことで、インスリン量の調整が可能になります。また、自己血糖測定をすることでご自身の食事に対する意識が変わり、血糖値コントロールへの意識が変わります。
糖尿病治療薬はどんなものがありますか?
注射薬ではインスリン製剤、GLP-1アナログ製剤、内服薬ではビグアナイド製剤、チアゾリジン、アルファグルコシダーゼ阻害剤、スルフォリルウレア剤、グリニド系製剤、DPP-4阻害剤、SGLT2阻害剤、イメグリミンなどがあり、患者様お一人おひとりに適した薬剤を選択していきます。
【1型糖尿病について】
1型糖尿病はどんな人がかかりやすいですか?
小児から思春期にかけて発症することが多いですが、成人以降に発症する人もいます。1型糖尿病は、2型と異なり生活習慣が原因ではありません。また、先天性のものでもありません。
1型糖尿病に罹患していますが、妊娠したいと思っています…
1型糖尿病を患っていても妊娠や出産はできます。ただし、血糖値コントロールが必要となります。血糖コントロールを行わないとお母さん・赤ちゃんともに合併症を起こす恐れがあるため、注意が必要です。
1型糖尿病は食事制限が必要ですか?
これまでの生活習慣の中で、食事の栄養バランスが悪かったり、カロリーコントロールができていなかったりする場合は、改善が必要です。すでに食事習慣、運動習慣ともに適切な方は、そのまま継続していただいてかまいませんが、食事や運動に問題がある場合は改善が必要です。特にインスリン療法を行う場合、食事や運動が適切でないと重度の低血糖を起こすことがあるためご注意ください。